貰ひたい理由は
たった一つあるきりです。
さうしてその理由は僕は
文ちゃんが好きだと云ふ事です。
勿論昔から好きでした。
今でも好きです。
その外に何も理由はありません。(略)
僕には文ちゃん自身の口から
かざり気のない返事を
聞きたいと思ってゐます。
繰返しで書きますが、
理由は一つしかありません。
僕は文ちゃんが好きです。
それでよければ来て下さい。

芥川龍之介
『芥川龍之介全集』第16巻